■blog vol12:ぷらぷらの種たち

京都・洛西にて農薬不使用などこだわり栽培のお野菜の生産・販売をしております。
PlantsPlanetぷらぷら広報担当・嫁です。

マルシェに出店しているとお客様からお野菜に関して色々ご質問を頂きます。
中には「このお野菜は固定種?」「F1品種は育てているの?」と尋ねられることも。
自分の体を作る食物がどのような過程を経て販売されているか興味が生じるのは大小あれど当然だと思います。可能な限りご質問には丁寧にお答えしたいと思いつつも、限られた時間での説明はなかなか難しく、せっかくなので今回は「ぷらぷらの種たち」と題してご紹介したいと思います。

種から育てる
ぷらぷらではお野菜は苗からでなく「種」から育て植え付けをしています。
通常農家さんは育苗されたものを購入し植え付けをしているかと思いますが、コストの面や、多品種でバリエーションを豊富にするためにも「種」を発芽させ苗を作り畑に植えて育てています。発芽温度や育成条件が揃わず、苗づくりで上手くいかないこともしばしば。立派な苗になって畑に定植するまでハラハラです。
そして苗からでない理由がもう一つ。育苗された苗は出荷までにどのような土壌で薬剤処理や施肥がなされているか分からないため。育成において可能な限りその出所、使用されたものの経緯がわかるようにし、こだわり栽培を追求しています。

農法については前ブログvol4:自然農法あれやこれやをご参照ください。

種には種類がある
種と名前の付くものには人間が分類をするための区分わけがあります。冒頭の「固定種」や「F1品種」などもその区分のひとつです。きっと植物からしたら「そんなものは知らん」だと思いますが…。
書く前からこんな言い草ではいけませんが、正直「めっちゃややこしい」です(笑)。
ではそのややこしい区分わけを紐解いていきます。

「種」という名前のつく名称ご説明
思いつくまま「種」という名前のつく名称についてご説明します。
ここでは植物やお野菜の「たね」に限らず、生物全体をさす「種(しゅ)」もありますので、ご了承ください。

在来種(ざいらいしゅ)…ある地域に古くから存在する生物種(下位区分である亜種、品種なども含む)やその系統を指します。(引用:Wikipedia 在来種

外来種(がいらいしゅ)…もともとその地域にいなかったのに、人為的に他の地域から入ってきた生物のこと。アレロパシーが強い植物など、その一部は生態系や経済に重大な影響を与えることがあり、環境問題のひとつとして扱われる。(引用:Wikipedia 外来種

固定種(こていしゅ)…形質が固定され親と同じ性質のものが育つ種類のこと。
固定種の中でも、同一地域で伝統的に栽培されてきたものは「在来種」と呼ばれたり、海外では家族単位で代々受け継がれてきたものは「エアルーム品種」と呼ばれ、各々の土地の栽培環境や栽培者の好みにより個性的で多様な特長を持つ。

F1品種(えふわんひんしゅ=first filial GenerationのFをとってF1と呼ばれています)…
異なる形質を持つ種類を人工的に交配させて作る種で、ハイブリッドシードとも呼ばれます。
見分け方ですが、市販の種の袋に「〇〇(会社名)交配」と書かれているものはF1品種です。
例えば、太くて収穫期間が短い大根と、細くて収穫期間が長い大根があるとします。それらを交配させて「太くて収穫期間が長い」大根が出来、F1品種として「太くて収穫期間がながい〇〇交配 フトナガ大根」と販売されます。
同じ大根という品種でも自然界では花の咲く時期が異なるため自然に交配しない品種同士でも、この方法を使うことで交配が可能です。
特徴として、均一な色形になりやすく、収穫時期も揃いやすいそうです。そのため日本のスーパーではこのF1品種のお野菜が売り場のほとんどを占めています。

GM種(じーえむしゅ=GM種子、GM作物など)…
遺伝子組み換え作物【Genetically modified organism=GMO】とはその名のとおり植物の持つ遺伝子を人工的に操作したものです。
例えば除草剤不耐性といって、除草剤をかけても作物だけは生き残るようにしたり、作物が食害に遭った際に殺虫剤として効果を発揮するように操作したものを指します。遺伝子の書き換えを行うことを「ゲノム編集」と言い、これは人為的に操作をしないと起こりえない現象です。

有機種子(ゆうきしゅし)…
播種(=たねまき)から採種(=たねがとれる)までの間、農薬や化学肥料を使用しないで栽培した種子のことです。反対の言葉として「非有機種子」があり、有機種子は「オーガニックシード」と称して販売されています。

ややこしいのは「どっちもあるから」
ここまで定義をつらつら書きましたが頭の中が混乱しますよね。ですので表にしてみます。(※当畑で育てているものは丸●を付けて表示しています。)

(参考:FAMIC GMO品種一覧
(参考:くらしとバイオニュース「ウイルス抵抗性バイテクパパイヤ『レインボー』の開発物語と日本における表示について」

ややこしいのは「在来種」という名称なのかなと個人的には思います。
生物学的に「在来種」の反対語は「外来種」です。もともとあったよー!なのか、海外から来ました!なのかという違いでしょうか。さらにこいつは「固定種」のなかの一部定義として使われているのでそれがややこしい元を生んでいるのではなかろうか…?

表を見てもらってお分かりのとおり、当畑では海外の固定種で形や味に特徴があるものも栽培しています。スーパーで見かけないお野菜がうちで見つかるのはこういった理由があります。

F1品種は安全?危険?
これに関して私たちは「ほぼ安全」と考えています。というのも、
「自然なもの=安心」は一概には言えません。例えば自然界にも人間をはじめ動物たちが食べると毒になるようなもの(アルカロイドとかソラニンとか)もありますし。ただし、長い年月をかけてF1品種が育てられ市場で出回っていることを考慮すると比較的安全であると思います。
本来交配するはずのないもの同士が交配しているのに?と思われるかもしれませんがF1品種の種を得る際、人が直接雌しべに花粉を付けたり、ミツバチなど虫の力を借りて受粉をしていることが挙げられます。また、F1品種は種を付けない特性(雄念性)があるので将来的に品種が減るからダメと考えられがちですが、一概にそうではありません。
F1品種でも種をつけるものは多数あります。ただし前述のとおり子供が同じ形質とは限りません。F1品種の甘いトマトから採れた種を撒いたら次の年は全然違うトマトが出来た…なんてこともあったりするかも?

ではGM種は?
反対に不安視しているのは「不自然なものを組み込んでいる=GM種」です。
ゲノム編集の安全性は歴史が浅く知見が少ないこと、本来持たざる遺伝的特性を人為的に組み込んでいることの影響がどこまで及ぶかが現時点で不明であることが挙げられます。
ぷらぷらでは今後もGM種は作りません。それ以外にも遺伝子組み換えを使用しているものは一切畑に入れないつもりで、油粕(なたねを絞った搾りかすのこと)も厳選したものを使用しています。

結局、何を自然と捉え、何を安全安心と考えるかは、これらの背景を熟考した上で各人が選択していくより他ないのではないかなぁ、と思います。

ぷらぷら畑で行っている「自家採種」について
現状、F1品種以外の種で出来のよさそうなものに関しては一部自家採種しています。
昨年は小麦や豆、切り花用のお花の種などから種をとり、今年も見事に咲いたり発芽しています。特に麦は出来が良くて嬉しいです。畑も広がりこういった自家採種のお野菜も増やせていけたらなと思います。

たまに出現「野良やさい」
小さい畑に色々な野菜がひしめき合っていることもあり自然交配で不思議なお野菜が出来ることもあるんです。
例えば昨年小松菜を植えたところから、他のアブラナ科の植物(おそらく大根か、かぶらか・・・)と交配したと思われるお野菜が翌年出現したり。上は立派な小松菜、根っこはかぶらのような大根のような。面白がって「こまこん(小松菜+大根)」と呼んでお鍋でおいしく頂きました。(結構いい味でしたよ。)
きっとこうやって出来たお野菜の種を大事に選別して固定種たっだりその土地のお野菜、そのおうちの品種のお野菜になっていったんだろうなぁ。「ぷらぷらこまこん」が当畑の固定種になる日もくるかも?!

以上「ぷらぷらの種たち」でした。

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